健康一口アドバイス
膀胱の病気について
泌尿器科長 鈴木 仁
膀胱は腎臓で作られ尿管を通ってきた尿を貯めて意識的に尿道へ出す袋のような臓器です。その壁は内側から粘膜細胞、粘膜固有層(線維組織)、筋層の3層構造で、弛緩、収縮を繰り返しています。
代表的な疾患は膀胱炎です。直腸に常在する一部の菌(約70%は大腸菌)が尿道から膀胱へ侵入し、膀胱粘膜に付着・増殖して粘膜細胞内に侵入することで炎症が起こり、排尿時痛、頻尿などの症状がでます。大概の膀胱炎は抗菌剤の投与で治癒しますが、症状を繰り返す場合は膀胱癌の可能性もあります。
膀胱癌は粘膜細胞から発生します。男性に多く、年齢別では男女とも60歳以降に増加します。重要な発がん要因は喫煙です。また合成化学塗料を扱う職業病にもなっています。最も多い症状は血尿です。程度は様々ですが、目で見てわかる血尿の場合は約3人に1人に膀胱癌が見つかり、その約70%は筋層まで進行していない表在性の癌です。
診断は膀胱鏡検査と尿の細胞検査で行います。表在性の癌の治療は主に経尿道的に根治切除を目指しますが、再発する場合もあり複数回切除することもあります。筋層まで進行している場合は膀胱を全て摘出することもあります。膀胱炎様症状がなかなか治らない方はご注意ください。
2016年10月1日
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